SCENE
小さな花火師、家族に「笑顔の花火」を打ち上げる。〜柴犬のチル〜
愛するペットが初めて家族になった日をお祝いする「うちの子記念日」。
盛大に祝福するだけでなく、年に一度、忘れられない“あの日”を思い出す大切な時間にもなる。
今回取材をしたのは、当時生後10ヶ月だった柴犬のチルちゃんと暮らす井上さんご家族。
パパさん・ママさん・お子さん2人、そして柴犬のチルちゃん。
仲睦まじい井上家の取材は、終始笑顔にあふれ、暖かな時間が流れていたーー。
新しい家族がやってきた
2018年9月23日、柴犬のチルちゃんは井上家の家族になった。
神奈川県小田原市に住む井上さんご家族がチルちゃんに出会ったのは、自宅からほど遠い鹿児島県志布志市。
どのようにして、遥か遠くで生まれたチルちゃんと“運命の出会い”を果たしたのか。
そのことについて、ママさんはこのように語る。
ママさん:
「小学生の息子が犬が大好きで、ずーっと犬を飼いたいって言っていたんです。学校の短冊で、他の子が将来の夢などを書く中“犬を飼いたい”って書くくらい! 家族で話し合って犬を迎えようっていう話になったんですが、友人が柴犬を飼っていたので、うちも柴犬がいいねって話になって。主人の実家が宮崎県にあるんですが、いつも家族みんなで車で帰省するんですよ。そのときに鹿児島県に柴犬のブリーダーさんがいることを知って、帰省をしたときに家族全員で見にいきました。その中に、のちの“チル”もいたんですけど、まだ生まれて10日くらいしか経っていなくて、同じ日に生まれた兄弟たちとの見分けもつかないくらい小さかったんです。もうみんなイモムシみたい(笑)。それに、生まれたばかりだったので、その時点で譲渡できるかどうはわからないんですよね。ブリーダーさんの元でしっかり様子を見て、50日間経ったらお譲りできるかどうかご連絡しますと言われました」
あれから50日が経ち、無事にチルちゃんを家族に迎える準備が整った。
飛行機に乗って
ママさん:
「チルは、2018年9月23日に、飛行機に乗ってやってきました。午前11時くらいに到着する便だったので、みんなで早起きをして家族全員で空港まで迎えに行きました。ワンコたちは、私たちが飛行機に搭乗するときとは別の場所を通ってくるんです。主人が細かく調べてくれて、準備はバッチリ。チルに対面したときは、小さなバスケットに入っていて、あの可愛さは衝撃的でした!」
車で自宅の小田原へ
ママさん:
「小田原の自宅までは車で帰りました。誰が抱っこをするのか、中学生の娘と小学生の息子で取り合いですよね(笑)。お互い譲りながらヒザの上に乗せて、慎重に帰ったのを今でも覚えています」
井上家にとって、初めての犬。さらに小さく儚いパピー。
車での道中もよっぽど緊張していたかと思えば、当時の様子について娘さんはこのように語る。
娘さん:
「チルは私と弟のヒザの上で寝てくれたんです! だから緊張はしなかったです。今まで感じたことのないニオイがして、なんとも言えない気持ちになりました。とにかく可愛かったです!」
息子さんが、頰をゆるませながらつづける。
息子さん:
「空港で顔を合わせたとき、かわいいなぁって思いました。チルは顔がカワイイ。空港ではちょっと怯えているように見えたけど、車ではヒザの上で寝てくれたから本当に嬉しかったです」
道中のアクシデントもなく、チルちゃんは家族のヒザで眠ったまま、無事小田原の自宅に到着。
家族“5人”で眠った夜
ママさん:
「自宅についたら、少しだけお庭で走らせました。まだワクチンも終えていないから不安でしたけど、おしっこをさせるのとリフレッシュを兼ねて少しだけ。小さなカラダで庭中をクンクン嗅いでまわっていて。その様子を見て、新しい家族ができたんだなぁって改めて思いましたね」
まさにその瞬間をうつした動画があるとのことなので、提供してもらった。
丸っこいカラダで一生懸命歩く姿。「わたしたちは、この日のことを忘れてはいけない」と、改めて思わせてくれる動画だ。
ママさん:
「うちは、家族みんなで和室で寝ているんですよ。犬との暮らし方について調べると、いっしょに眠ってはいけないと書いてあったけど、その日はダンボールに入れて同じ部屋でいっしょに眠りました。朝方の4時くらいに目が覚めたみたいで、ゴソゴソ動いたり部屋を走り回ったりして。主人も子どもたちも気づかなかったみたいだけど、私は心の中で『これは大変なことになるぞ』と思っていましたね(笑)。車の中ではとってもおとなしかったので、チルは穏やかな子なのかも! と思っていましたが、家に着くとしっかり“The 柴犬”でした(笑)」
チルちゃんが来て、変わったこと
新しい家族が増えると、今までとはいろんなことが大きく変わる。
チルちゃんを迎えてから、井上家はどのように変わったのだろうか。みなさんに聞いてみた。
仲睦まじい井上家のみなさん。ここからは、会話形式でご覧いただこう。
パパさん:
「チルはねぇ、いまだに家族全員をお出迎えしてくれるんですよね。ぼくが帰宅したときも、嬉しそうに迎えてくれるんです。そんなことをされたら、今まで以上に帰るのが楽しみになりますよね」
息子さん:
「チルはパパが一番好きだもんね。パパが帰ってくるとチルが『アォ〜ン』て甘えるみたいに鳴くし、ぼくたちが『パパ』って言葉を言っただけで探し出すもん」
パパさん:
「そうかなぁ。それは嬉しいけどなぁ」
娘さん:
「私も家に帰るのが今まで以上に楽しくなった! チルが待っててくれるって思うと、早く家に帰りたくなっちゃう(笑)」
息子さん:
「もっとにぎやかになったよね。ぼくは弟や妹がいないから、チルが来て妹ができたみたい。いけないことをしても、かわいいから許しちゃう(笑)」
ママさん:
「だって、チルとしゃべってるときは声が2オクターブくらい高くなるもんね(笑)。高い声で『チールーちゃん!』って話しかけている声が聞こえてくると、別の部屋にいても“今チルと遊んでいるんだなぁ”ってわかるよ(笑)」
息子さん:
「はずかしいじゃん(笑)」
はじめての「うちの子記念日」は
2019年9月23日は、井上家とチルちゃんにとって、はじめての「うちの子記念日」になる。
どのように過ごす予定なのか、ご家族のみなさんに聞いてみた。
ママさん:
「チルはいつも私たちのごはんを見て、うらやましそうな顔をしているんですよね。でも人間の食べものはあげられないので、私たちと同じようなメニューをチル用にアレンジして豪華な食事を用意してあげたいですね」
息子さん:
「ケーキもあげたい!」
娘さん:
「いいね!」
パパさん:
「今まではお祝いは誕生日なのかなぁと思っていましたけど、『うちの子記念日』も大切にしたいね」
息子さん:
「どっちもやりたい!」
一同:
「そうだね、どっちもお祝いしよ!」
ママさん:
「夏休みもありますし、いろんなところにも連れてってあげたいですね。今年のお盆は、宮崎県にある主人の実家にもいっしょに帰省する予定です。今年の夏は、いままでよりも特別なものになりそうですね」
さいごに
チルちゃんが生まれたのは、2018年8月3日。そして、「うちの子記念日」は9月23日だ。
今年の夏は井上家にとって、最高に忙しくて幸せな日々になるに違いない。
チルちゃんがはじめて“うちの子”になったとき、そこらじゅうを元気に走り回り、「まるで家の中に打ち上げ花火があがったようだった」とママさんが言っていた。
半年が経つとすっかり落ち着いたそうだが、今では家中を走り回る代わりに、家族みんなに『笑顔』という大きな花火を咲かせているチル。
世界一小さな花火師は、これからも家族に笑顔の花火を咲かせつづけるのだろう。
おまけ〜パパへのサプライズ〜
ちょうど「父の日」でもあった取材当日。ママさんと2人のお子さんは、パパさんにサプライズを用意していた。
サプライズで渡したプレゼントは、チルちゃんが主役となった家族写真のフォトビー。
「パパ、いつもありがとう!」
感謝の言葉を添えてフォトビーを渡し、「これはなんだろう?」と緊張気味に箱を開けるパパさん。
フォトビーを見た瞬間、「これはスゴイ! もったいなくて飲めないなぁ」と満面の笑みを見せてたのだった。
この姿を見て、取材班全員がこっそり目を潤ませたのは、秘密のハナシ。
さいごに、スペシャルムービーをご覧ください!
Photo&Movie:Okapi焙煎所/Text:Chika Yugawa