SCENE

指折り数え、迎えた花は。〜フレンチブルドッグのヒマワリ〜

うちの子記念日

愛ブヒがうちの子になった日のことを、覚えているだろうか。初めて出会った瞬間や、うちにやってくるまでの慌ただしい数週間。そして、我が子が初めてやってきたあの日ー。

今年9歳になったハニーパイドのヒマワリは、ある理由でちょっぴり遅れてやってきたという。ヒマワリと暮らす藤田さんご夫婦に、うちの子になった日のエピソードをうかがった。

 

ヒマワリに初めて会った日

うちの子記念日,フレンチブルドッグ

藤田さんご夫婦が初めてヒマワリに出会ったのは、関東近郊のとあるブリーダーだった。

「ブリーダーさんで初めてヒマワリに会ったのは、2009年5月でした。私たち夫婦は、当時ジャック・ラッセル・テリアと暮らしていたんです。その子は恐ろしくアグレッシブな子だったので、ワンコのお友達がなかなかできなくて……一緒に遊べるように、もう一頭ワンコを迎えたいねって夫と話をしていました。私も夫もフレンチブルドッグは知っていたけど、一緒に暮らしたことがなかったので毛色とかも詳しくなくて。今でこそハニーパイドはめずらしい毛色だってわかりますけど、出会った当時は『ジャックラッセルみたいな色の子』という印象でした。それに、先住犬は男の子だったので、なんとなく女の子がいいなぁとも思っていましたね」

初対面のヒマワリは、他の子とは少し違ったオーラを放っていたという。

「初めてブリーダーさんを訪れたとき、ヒマワリの兄弟や他のパピーもいて、全部で5頭くらいの子がいたかなぁ。ブリーダーさんがみんなをソファーの上に乗せてくれたんですよ。みんな生まれたばかりで右も左もわからない状況なのに、ひとりだけ私が私が! って前に出る子がいて(笑)。それがヒマワリだったんです。この子だけなんか違うなぁって大きく印象に残ったのを覚えています」

 

突然おそった悲劇

うちの子記念日,フレンチブルドッグ

その後も、頻繁にヒマワリに会いに行っていたという藤田さんご夫婦。そんな最中、予期せぬ悲劇が藤田家をおそった。当時のことについて、奥さんはこのように話す。

「先住犬のジャックラッセルが、4歳という若さで突然この世を去ってしまったんです……。ヒマワリを迎えようと思っていた頃でしたけど、あまりに突然のことで整理がつかなくて……ブリーダーさんにもお断りをしようと思っていました。そのことをブリーダーさんに連絡すると、私たち夫婦の他にもヒマワリを気に入ったご家族がいらしたみたいで。でも、ブリーダーさんは私たち夫婦に迎えてほしいって言ってくださったんです。もう少し待っているからねって。とても嬉しかったですけど、先住犬を亡くしてあまりにも早かったですし、新しい子を迎えることを手放しで喜んではいけないような気もしていました。でも、あるとき夫がそんな私を見て『パピーの力で元気になるかもしれないよ』って言ってくれたんです。ブリーダーさんや夫の言葉もあって、ヒマワリを迎えることを決意しました。ただ、私はどうしてもズブズブに愛してしまうタイプなので、当時から『いつかくるお別れをきちんと覚悟しながら迎えること』と呪文のように唱えていた気がします」

 

花火大会を待って

うちの子記念日,フレンチブルドッグ

ヒマワリが藤田家の子になったのは、2009年8月2日のこと。生後3ヶ月だった。通常パピーから迎える家族は生後2ヶ月で迎えることが多いが、なぜその時期だったのだろうか。それもまた、ヒマワリへの愛情表現だった。

「そのとき、近所で花火大会があったんですよ。先住犬は花火の音が苦手で、大きな音がするたびに吠えていました。だから、ヒマワリを迎えるのは花火大会が終わってからにしようと夫と決めていたんです。先住犬のこともそうですし、私たちのワガママを聞いてくれて、気長に待ってくださったブリーダーさんには今でも心から感謝していますね」

 

ヒマワリが「うちの子」になった日

うちの子記念日,フレンチブルドッグ

花火大会の翌日。ついにヒマワリが藤田家の子になる日がやってきた。

「ブリーダーさんは自宅の近くだったので、車で家まで連れてきてくださいました。ヒマワリにとって外に出るのは初めての経験。それなのに車内ではグーグー寝ていたそうです。ブリーダーさんがやってくるやいなや『大物になりますよ』って太鼓判をおしてくれました(笑)。うちに来てからも、ほとんど物怖じしなかったですね。部屋に入ってすぐに家の中を探検したり、夜泣きもほとんどなかったと思います。その後もいたずらをしない、大きな音に驚かない。ヒマワリは私にとって4代目の愛犬になるのですが、こんなに穏やかなワンコがいることにビックリでした! 人に従うことを疑わず、心を平和に保ち続けられることがヒマワリの一番の強さだと思っています。ただ、とても我慢強い子なので痛みなども耐えてしまうんです。サインを見逃さないように、正常な状態を知っておくよういつも心がけています。これは、パピーの頃から今でも変わりません」

 

旦那さんは犬が苦手だった

ヒマワリで4代目の愛犬という奥さん。一方旦那さんは、奥さんといっしょに暮らすまで犬が苦手だったとのこと。そんな旦那さんは、ヒマワリとの出会いについてこのように語る。

「先住犬のジャックラッセルは、妻の実家から連れてきて一緒に暮らしていたんです。過去の経験から犬が苦手だったので、最初は変な汗が止まらなかったです(笑)。もちろんワンコのことはすぐに好きになりましたけどね。でも、ワンコが苦手な頃からなぜかフレンチブルドッグのことは気になっていて。カワイイなぁって。特に理由なんかなくて、ただなんとなく、心の声がそう言っていたように思います。改めて考えてみると、フレブルの曲線を中心としたフォルムがビジュアル的に心になにかを訴えてきたような気がしていますね。どんなフレブルも、なにか話しかけてきそうな表情が良かったのかもしれません」

 

初めてのフレブル、初めてのパピー

うちの子記念日,フレンチブルドッグ

「ぼくにとってパピーから暮らすのは人生で初めての経験だったので、どんなふうに接すればいいかドキドキしていました。もうただただカワイイという感じで。ちっちゃくて壊れ物みたいで、どうすれば仲良くなれるかなぁっていつも考えていました。リビングのテーブルの脚をガジガジしている姿は、なぜか強く印象に残っています。お留守番中に携帯電話の充電コードをガジガジかじっていたようで、部品が見つからずにあわてて病院でレントゲンを撮ってもらったこともありました。幸いにも異常はなく、後になって部品が見つかりました。でも、ヒマワリが粗相をしたのは後にも先にもこれだけです。ちっちゃなちっちゃなヒマワリを、不器用な自分がどんな風に健やかに育てるのか……当時はそんなふうに思っていましたけど、こちらが思う以上にヒマワリはいい子で、こちらがなんとか恰好がつく飼い主に育ててもらった気がします。そういえば、ヒマワリを迎えるって決めて名前を考えるとき、ぼくはチョウチンて名前を提案したんです。すぐに却下されましたけどね(笑)。今思えば、そんな時間も楽しかったなぁ。ヒマワリが来てからは、毎日がうちの子記念日のような感じで、毎日溺愛、毎日スペシャル! こんな日が、一日でも長くつづけば幸せに思います」

 

来年は10歳。あの日と同じ食卓で

うちの子記念日,フレンチブルドッグ

来年で10歳を迎えるヒマワリ。この大きな節目を機に、今まで以上にうちの子記念日を大切にしたいと奥さんは語る。

「ヒマワリの誕生日は5月。毎年その日は夫婦そろって仕事をお休みして、一日中一緒に過ごすようにしています。今までうちの子記念日を特別にお祝いしたことはないですが、ヒマワリは花火大会の翌日にやってきたので、毎年花火の時期になるとうちの子になった日を思い出しますね。来年ヒマワリは10歳を迎えるので、もっとうちの子記念日を大切にしていきたいです。Instagramに「#フェアリー期」をつけて写真を投稿するのにも憧れちゃいますよね! ヒマワリを迎えたその日、私の両親も我が家に呼んでヒマワリを囲んでみんなで食事をしたんです。来年の8月はその時と同じ食事を用意して、またみんなで一緒に祝いたいですね。ヒマワリも両親も高齢になってきたので、まずはその日をみんなで元気に迎えられるように一日一日を大切にしていきたいです」

 

おわりに

うちの子記念日,フレンチブルドッグ

太陽のように明るく育ってほしいという思いを込めてつけた『ヒマワリ』という名前。ちっちゃくて儚くて毎日ドキドキしていたあの日から、共に過ごした9年という日々。毎日がスペシャル! と思わせるほど明るく元気に育っている彼女は、家族にとってまさにヒマワリのような存在。でも“ヒマワリ”は、たくましく照らしつづける太陽と、根元からしっかり支える栄養がなければ健やかに成長できない。

ヒマワリは、常に明るくたくましいママさんと、まっすぐな愛を注ぐパパさんに支えられ、来年もまた笑顔の花を咲かせてくれるに違いない。花火が上がるころにー。